暗室プリント時のソラリゼーション


 ソラリゼーション (Solarization) はネガフィルムや印画紙などのハロゲン化銀(e.g. AgCl)を用いる写真の反転効果を利用した古典的な表現技法である。この技法は1859年にH. de la Blanchèreによって報告1)されているが,一般的には20世紀に活躍したMan Rayによるポートレート作品が有名である。

 通常,フィルムや印画紙への露光はカメラや暗室で引伸機によって行われる(一次露光)。露光後のフィルムや印画紙は,暗室で現像/停止/定着処理によって一般的に鑑賞できる状態になる。

 一方,ソラリゼーションは一次露光後の現像処理の途中で意図的にフィルムや印画紙に光を与える操作(二次露光)を行う。本来暗室で行う現像中に二次露光すると,画像は白色が黒色へと部分的に色が反転する反応が起こる(サバチェ効果)。さらに,一次露光で多量の光を受けた黒い部分と少量の光を受けた白い部分とが隣接する場合は,銀の生成物の反応速度や濃度によって白色と黒色の境界に明瞭な線が現れる(マッキー・ライン)。これら反応によって起こる一次露光の像と二次露光の反転像とが共存する不思議さを感じさせる画像がソラリゼーションである。

 この作品はフィルムカメラ(Pentax 67Ⅱ)で撮影したネガフィルムを用いて,暗室プリント時のソラリゼーションを行った。ソラリゼーションは,暗室内でバライタ紙にプリントする現像時に白熱光を1秒強露光させてソラリゼーションを出させた。

 下の画像の左側は通常のプリントで,右側がソラリゼーションのプリントである。これら二枚を比較するとソラリゼーションのサバチェ効果がよく分かる。通常,太陽の明かりが当った部分は明るく(白く)表現されるが,この効果によって暗く(黒色)なる。逆に影のように元々が暗く表現される部分はそれほど色の変化は進まない。むしろ,現像の途中で反応が遅くなり,グレー色になる。また,鳥かごの籤や建物の基礎石の部分にはマッキーラインが現れており,ソラリゼーションらしい表現が随所に見られる。

1) Wikipedia, “Sabattier effect”, https://en.wikipedia.org/wiki/Sabattier_effect, 2021/3/17

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